ジャパンヴィンテージ家具の名作とメーカー ── 天童木工、マルニ木工、カリモク、飛騨産業ほか
第2回 物語
第3回 名作とメーカー(このページ)
中古の家具に出会ったとき、どこのメーカーの、どんな家具かがわかると、見え方ががらりと変わります。
前半では、1950〜60年代に生まれたジャパニーズ・モダンの名作を、後半では、いま中古でよく出会う日本の家具メーカーと産地を紹介します。気になるところから読んでください。
目次
読む時間の目安:約8分
1950〜60年代ジャパニーズ・モダンの名作
1957年にグッドデザイン商品選定制度(いまのグッドデザイン賞)が始まり、1960年には東京で世界デザイン会議が開かれました。日本のデザイナーとメーカーが、世界と肩を並べる家具を次々に生み出した、もっとも勢いのあった時代です。
バタフライスツール柳宗理・天童木工・1956年
2枚の同じ形の成形合板を、真ん中で背中合わせにつないだだけの腰掛けです。上から見ると、蝶が羽を広げたように見えます。柳宗理はイームズの成形合板の椅子に刺激を受け、天童木工の職人と開発しました。1957年にミラノ・トリエンナーレで金賞、1958年にはニューヨーク近代美術館(MoMA)の永久収蔵品になり、天童木工の名前は世界の家具業界に知られるようになりました。
籐丸椅子剣持勇・1960年
東京・赤坂にあったホテルニュージャパンのバーラウンジのためにデザインされた、籐(ラタン)の丸い椅子です。欧米の客にも合うよう、座面を広くとっています。1964年、この椅子はMoMAのコレクションに入りました。日本の家具として初めてのことだと紹介されています。
柏戸イス剣持勇・天童木工・1961年
杉の無垢材の塊を組み合わせた、どっしりとした一人掛けの椅子です。名前は、山形出身で昭和30年代に人気のあった横綱・柏戸にちなむと言われます。力士が座ってもびくともしない、ということでしょう。実際に座ってみると、名前のとおりの安心感があります。
座卓乾三郎・天童木工・1959年
成形合板の脚を持つ、四角い座卓です。洋家具の技術で、日本の畳の部屋の家具をつくり直した一品で、今も天童木工でつくられています。
低座イス長大作・天童木工・1960年
建築家・坂倉準三の事務所にいた長大作がデザインした、座面の低い椅子です。畳の上でも板の間でも使え、靴を脱いだ暮らしにそのまま入っていけます。座椅子の名作と呼ばれ、グッドデザイン賞も受けています。
スポークチェア豊口克平・天童木工・1963年
イギリスのウィンザーチェアを手本にしたと考えられる、細い棒(スポーク)の背もたれの椅子です。座面の高さは34cmほど。一般的なソファより低く、奥行きの深い楕円の座面は、あぐらをかいたり、横座りをしたりできます。仙台の工芸指導所でブルーノ・タウトや剣持勇と働いた豊口が、58歳で独立したあとにデザインしました。
剣持スツール No.202剣持勇・秋田木工・1955年
曲木の脚を持つ、重ねられるスツールです。地味に見えますが、1990年代に生産数が100万脚を超えた大ロングセラーです。2013年には、長く愛されたデザインに贈られるグッドデザイン・ロングライフデザイン賞を受けました。
天童木工はこのほかにも、水之江忠臣のブックチェア(1954年)、田辺麗子のムライスツール(1961年)、丹下健三が設計した国立代々木競技場の観客席(1964年)など、数えきれない仕事を残しています。
メーカーと産地いま中古で出会うメーカーと産地
同じ「日本の木の家具」でも、メーカーや産地によって、得意なつくりも、木の種類も違います。中古で見かけたときの手がかりになるよう、それぞれの持ち味と見分けどころをまとめました。
天童木工山形・1940年創業
1947年、日本の民間企業で初めて成形合板の家具を実用化したメーカーです。薄い板を重ねて型で曲げた、なめらかな曲面が持ち味。上で紹介した名作の多くが、ここから生まれました。座面の裏などにメーカーのプレートやラベルが残っていることがあります。
マルニ木工広島・1928年創業
曲木から始まり、「工芸の工業化」を掲げてきたメーカーです。1952年に新聞で全国から募集して決めた孔雀のマークは1976年まで使われ、このマークの残る家具は「オールドマルニ」と呼ばれて、今も探す人が多くいます。1968年に出した「ベルサイユ」は、国内の洋家具市場で空前のヒットになりました。
カリモク家具愛知・1940年創業
刈谷の小さな木工所から始まり、ミシンテーブルやピアノの部品の下請けで腕を磨きました。1962年に自社の椅子を発売。のちに「Kチェア」と呼ばれる、シンプルな木の肘掛け椅子です。
飛騨産業岐阜・飛騨高山・1920年創業
使われずにいたブナを活かそうと、曲木の椅子から始まったメーカーです。1969年に発売した「穂高」は、1997年に通算50万脚を超える定番に。2001年の「森のことば」は、それまで嫌われていた木の節を、そのまま模様として活かしています。
柏木工岐阜・飛騨高山・1943年創業
飛騨で創業し、1950年代からウィンザーチェアをつくってきたメーカーです。細い棒を組んだ背もたれの椅子に、飛騨の木工の手わざが出ます。
秋田木工秋田・湯沢・1910年創業
無垢材を立体的に曲げる曲木を専門とする、日本では数少ないメーカーです。柳宗理や剣持勇とも仕事をし、1966年には木の椅子で日本初のグッドデザイン賞を受けました。継ぎ目なしに丸く曲がった脚や背が見分けどころです。
カンディハウス北海道・旭川・1968年創業
ドイツで修業した長原實が旭川で立ち上げ、1982年から CONDE HOUSE のブランドで家具をつくっています。北海道のナラなど、無垢材を活かした落ち着いた家具が中心です。
松本民芸家具長野・松本
民藝運動から生まれた洋家具です。粘りがあって硬く、木目の美しいミズメザクラを使い、和家具の職人の技でウィンザーチェアや英国式のテーブルをつくってきました。使い込むほど色が深まります。
九州民芸家具・北海道民芸家具
どっしりとした木組みの、民芸調の家具です。茶箪笥やサイドボードなど、和室にも洋室にもなじむ収納家具によく出会います。
岩谷堂箪笥岩手・奥州
重厚な木地に漆を塗り、手の込んだ彫金の金具を打った箪笥です。1982年に国の伝統的工芸品に指定されています。
府中家具広島・府中
戦後、高級な婚礼家具の産地として名を上げました。
一枚板
メーカーの品ではありませんが、日本の木の家具として欠かせません。楠や欅など、一本の木から切り出した天板は、同じものが二つとありません。
おわりに
名前や年代がわかると、中古の家具は「古い家具」から、「誰かが、ある時代に、ある考えでつくった家具」に変わります。孔雀のマークひとつ、曲木の脚一本にも、その家具が生まれた背景が見えてきます。
けれど、メーカーの印がなくても、良い家具はたくさんあります。材を見て、つくりを見て、実際に座ってみる。最後に頼りになるのは、自分の目と体です。モノ道楽では、一点ずつ手入れをしてからお届けしています。気になる家具があれば、お気軽にご相談ください。